聞いてないよぉ
メキシコ生活も3ヶ月が経った頃、私を襲ったのは「猛烈な痒み」でした。
夜も眠れないほどの異変に、ついには手の甲がパンパンに腫れ上がる事態に……。
「これはただ事ではない」と、会社のベテラン通訳さんに連れられ、街の薬局に併設された無料診療所へ駆け込むことになりました。
そこで待ち受けていた、衝撃体験を記録します。
どうした私の体!正体不明の痒みとの格闘
眠れない夜の始まり。
メキシコでの生活に慣れてきた矢先のことでした。
全身を駆け回るような痒みが一週間続き、日に日に激しさを増していきます。
近所の薬局で相談して処方薬を試してみたものの、一向に改善する気配がありません。
それどころか、手の甲まで真っ赤に腫れ上がり、熱を持ち始める始末。
必死に心当たりを探りますが、思い当たるのは「猫との同居」か「最近使い始めたお香」くらい。
でも、猫とはすでに2ヶ月以上平和に暮らしていますし、お香もそれほど刺激が強いものではありません。


「このままでは仕事にならない!」と、藁をも掴む思いで、通訳さんとDr.Simiというマスコットキャラクターでお馴染みの「Farmacia Similares(ファルマシア・シミレス)」へと駆け込みました。
診断開始!メキシコの身近な医療「無料診療所」の実態
整理券を握りしめ、いざ未知の小部屋へ。
メキシコには「IMSS」という社会保険制度がありますが、病院に行くか迷う程度の症状の時、非常に心強いのが薬局併設の無料診療所です。
IMSS(イムス): 雇用されている労働者が加入する公的社会保険。窓口負担は原則無料ですが、待ち時間が非常に長いことで有名です。
高額医療保険: 私立の総合病院などを利用する際の保険。設備は最新ですが、利用には一定の条件があります。
薬局の診療所: 若手の医師などが駐在しており、チップ程度の支払いで処方箋を出してくれます。ちょっとした不調ならここが最短ルートです。
受付待ちの人はいませんでしたが、まずは薬局のレジで整理券をもらい隣の診療所へ移動します。
診療所へ入ると、まずは名前や年齢などの基本情報を確認。
喉のチェックや心音の確認など、手順自体は日本と変わりません。
問診の結果、先生の下した診断は「何かしらのアレルギー反応」。
そして、続けざまにこう告げられました。「手っ取り早く注射で抑えてしまいましょう」。
驚く私を余所に、通訳さんは「メキシコではこれが普通だよ。すぐ効くからちょっと我慢すれば大丈夫!」と涼しい顔。そのまま「とりあえず、隣の薬局で注射セットを買ってきてね」と、私は再び薬局のカウンターへ送り出されました。
お尻を出せ!一発注射するぞ!
注射器、自分で買うスタイル。
ここで第二の衝撃です。
メキシコでは、薬剤と注射器がセットで普通に市販されているのです。
薬剤師から渡された「簡単すぎて犯罪にでも使用されないのか?」と思うような注射器セットを手に、意を決して診療所へ戻りました。
準備を始める先生を横目に、てっきり、肩か腕を出して待っていれば良いものと思い、袖を捲って待機していた私。
すると先生が優しく「とりあえず、ベッドに横になってください」と一言。
「あぁ、怖がっている私への気遣いで、リラックスさせてくれるんだな」と安心したのも束の間。
次の瞬間、ズボンを下げられ、お尻の付け根にブスリと注射を打たれたではありませんか!!
「聞いてないし!痛いし!そもそも見えないのが怖すぎる!!」
私はかつて献血前の検査採血で失神したほど注射が苦手なのです。
お医者さんと通訳さんは悶絶する私を見て笑っていましたが、私は本気で魂が抜けるかと思いました。
しかし、この「お尻注射」の威力は、恐怖に比例して凄まじいものでした。
会社に戻ってわずか1時間後には、あんなにひどかった痒みが嘘のように引き始め、その日の夜には全身の痒みもすっかり引いしまいました。
一週間の苦しみは一体何だったのか……。
メキシコの薬局、その即効性と「お尻への容赦のなさ」は本物でした。









